神田のある母子の記憶 その3

警戒心満々の視線を外しながら、そろりそろりと正面に回る。
そして逃げなかった理由が判明した。
右の後ろ足が不自然に前の方向に向いている。
どうやらこの子猫は足が悪いのだ。
痛がっている様子はない。
過去に骨折し、そのまま固まってしまったのかもしれない。
先天性のものなのかもしれない。確かめるすべはない。
しかしその視線は大きな人間に負けてはいないし、
普段は生命を預けているであろう左前足は力強く撓み、
いつでも地面を蹴ることができる体勢だ。
(続く)
人形町
枯草の褥
此処で生きる
UNTITLED














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